パルファンメールマガジン20226年8月号
7作目の香り「パル・ガランス」発売に向けて、旅のエピソードを交えたエッセイで送ります

【私の鼻は小さい。でも感度は良好である】
〜旅先で
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先日旅先でこんなことがあった。
到着した駅から目的地まで、時間がなかったのでタクシーに乗ることにした。
田舎の駅に並ぶタクシーは古いセダンが多く、できれば乗り心地のいいものがいいねと、並ぶタイミングを見計らって比較的新しいタクシーに乗り込んだ。
乗った瞬間、芳香剤だか消臭剤だかの匂いが車内に充満している。
「あ…やばい」
私は合成して作られた臭いが苦手だ。
見るとエアコンの吹き出し口にクリップ形の消臭、芳香剤が付いている。
瞬間で同じ匂いの車を思い出し、その時の記憶がふっと蘇る。
もちろんこの運転手さんに悪気はない。
ただ、
この空気のままあと30分も乗るのか。。。と少し不安を覚えながら車は走りだした。
ありがたいことにこの運転手さん、
初めてこの土地を訪れた私たちに、歴史や見どころを話してくれた。
ただ、、、ボソボソと声が小さくてよく聞こえない。
おまけに喋っているからか、車のスピードが若干遅い。
このままではまずいと
窓を開けて外気を入れてみると、今度は運転手さんの声が聞こえない。
悪いなと思って窓を閉めると、車内のニオイがどうも、「鼻につく」。
ハンカチを当ててどうにか紛らわせようとしたが、強い臭いが呼吸のたびに気になって話が入ってこない。
私はだんだんと余裕がなくなり、話しかけられても反応ができなくなった。
すると、今度は車内の空気が悪くなった。

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〜食事は3回、呼吸は2〜3万回〜
食べ物は数週間、水分は数日とらなくてもなんとかなるといいますが、空気は2分も吸わないわけにはいきません。
目なら「見ない」、耳にはイヤホンなどで「聞かない」という選択ができます。
でも呼吸を止めることはできません。
空気と匂いはセットです。
でもどうでしょう。
香水、芳香剤、洗剤、柔軟剤、ヘアケア製品。
消臭剤、虫除け剤など。
人は複数のニオイを自分の周りにつけています。
そのどれもが「よくしたい」「快適に感じてほしい」という善意から生まれたものです。
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鼻は、五感の中で唯一残る原始のセンサーです。
嗅覚は進化の過程で早くから備わり、食べ物を見つけたり、腐敗や煙などの危険を察知したりして、命を守るために働いてきたと考えられています。
だから私たちは、匂いに対して「好き」「嫌い」と頭で考える前に、体が先に反応することがあります。
全国の消費生活センターには、強いニオイで頭痛や吐き気などの体調不良を訴える相談が寄せられているそうです。
意外と知らない方が多いようですが、目に見えないけれど、匂いの分子は確かにそこに存在しています。
私たちはその空気を一日に2〜3万回呼吸し、 鼻で受け取り、 脳へ情報を信号で送ります。
そしてその情報によって感情を動かし、記憶を呼び起こし、脈拍や血圧にまで影響を与えます。
合成の香料などからは有機化合物(VOCs)が揮発していて、それが目や喉への刺激、頭痛、吐き気を起こし、身体へ悪影響を及ぼす可能性が問題視されています。
もちろん個人差があり、なんともない人もいます。
でも実際に困っている人がいることは事実です。
そして考えたいのは、子供たちやペットなどの存在です。
呼吸の回数や量はさほど変わらない中で
同じ空気をその小さな体で受け止めているとすると、その濃度は大人と比べて高くなると考えられます。
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そして
私はこのあと、運転手さんの"優しさ"に考えさせられることになります。
(後編へ続く)